紫堂の力を持たぬ煌に、緋狭様の力が共鳴している。
…煌は、多大なる緋狭様の"増幅"力を統制しようとしているんだ。
確実に、地下で見た時よりも、揺らぐことなき"自分"の力としようとしている。
ああ、煌の成長は本当に未知数だ。
芹霞さんへの強い想い故に、彼はまた進化したのか。
そこまで強く、芹霞さんを想っているのか。
それは妬ましくも、嬉しいことのように思えて。
何故あの馬鹿が…と思う気持ちよりも、あの馬鹿なら当然やるだろう…という気持ちが芽生えていて。
精悍な顔は苦しそうに歪んでいたけれど、そんな程度で紅皇の力を操れるのなら"ご愛嬌"じゃないか。
私では出来ないことなんだ、もっともっと必要以上に苦しむがいい。
そうとも思ってしまう私は、根底が浅ましい人間なんだろう。
橙色が崇高な赤の色に染まり、天と地と…上下2方向に大きく伸びて消えていく。
一瞬の静寂。
途端――
「!!!」
空が突然真っ暗になった。
そして――
白銀の境界線の遙か深い地下層から、局所的に湯気のように立上る黒い光と、
暗雲の遙か高き場所より燦々と降り注ぐ白い光。
「3、2、1!!!」
櫂様のかけ声に合わせて、
下からと上から…同時に力が放たれた。
力は天地共に同数…10本の鋭い槍状となり、
その先端を赤く染めて、勢いを増して。
お互いの力をぶつけあいたいかのように伸び合い、
そして――
一気に地殻を貫いた。

