「遅いんだよ、お前は!!!」


責めるような口調で、それでも安心したように微笑む櫂様に。


私は煌と顔を合わせて頷き合った。



大丈夫。


櫂様と玲様を信じよう。



真っ青な空に、何度も押し上げられる白煙。


その性急さが事の最期を告げるような…そんな切迫感を与える割には、この地獄絵図の中では、あまりに不似合過ぎる…長閑な背景で。


「煌、俺の石は返して貰う。

それと、お前の力を借りるぞ?」


櫂様の声に、血染め石を渡した煌が慮外だとも言うような声を上げる。


「は、俺役立てれるの!?」


「当然だろ? "増幅"出来るお前が不可欠なんだよ、元よりお前をこき使うつもり。1人で楽してるんじゃないよ?」


場にそぐわず、にっこり笑う玲様。


「で、でもよ…あいつら大量発生していて…」


生ける屍を指差す馬鹿蜜柑に、


「こうした大量戦闘は、桜の独壇場だ。出来るな、桜?」


櫂様の言葉に、私はこくんと頷いた。


私にも、役割がある。


それがとても嬉しくて…声にならなかった。


私は裂岩糸を構える。


さまざまな色合いの服を着た男達の顔は、最早生者のものではなく。


彼らが襲い掛かっている女達も、同じようなものなのだろう。


死者たる女達と、見下され抑圧された男達の、どこまでが本当の生者なのかは判らないけれど、1つだけ確かなことは、私達こそが生きているということで。


死者と生者の違いは何かと問われれば、


きっと私はこう答えるだろう。



もがき苦しんでも、諦めずに前に進むこと。



苦しみこそが"生"の証。


生をやめて苦しみから逃れれば、そこで自分という存在は負けだ。