男が犇(ひし)めく鏡面。


その不気味な面には、確かに屍体を敷き詰める…以外の意味を孕んでいるようにも思えるのも確かで。


その時、黙っていた櫂が口を開く。


「風の力は駄目だ。かろうじて…闇の力が使える程度か。…くそっ!!!」


櫂の顔に焦りが見える。


「白皇の思惑の内だったのか。だから、壊せないと踏んでいたのか。鏡こそが、あの男の切り札だったのか!!!」


「どうするよ!? 鏡のない処まで行くか? 魔方陣壊してきたあの地下に潜るか!!?」


「榊兄が言うには…地殻変動が起きた際、地下は全て今裏側になっちゃってる。今から鏡がない場所探してる余裕ないよ!!! 恐らく鏡を媒介にして、全てがレグの…もしくは、レグの産んだ人工知能の管理下にある。この鏡は普通の鏡じゃないよ、多分…あの女、蓮の持っていたのと同じだよ」


紫堂の力を弾いた不思議な鏡。


櫂の舌打ちが聞こえる。


「此の分だと、俺の闇の力もどこまで有効かは判らないな。鏡の影響下になく…盲点にもなる場所…」


そんな時、声がした。


「レグの家に行け」


見れば、そこにはあの女…蓮がいて。


「人工知能が暴走しているのなら、元凶たる機械を壊せ。私では無理だったが、お前達なら可能かもしれぬ。早く行け。道は拓いてやる」


そう言うと、両手に取り出した双月牙を飛ばして。



「お、お前!!!?」



双月牙は――

女達の身体を切り刻んだ。


「心配するな。元々こいつらは生きていない。時が止まった瞬間の…現実に戻るだけだ」


その言葉の如く…地面に倒れる女達の顔は、なぜか腐れていて。

刃物に切り刻まれているのに…どうして食い散らかされた痕までがある!!?


今までの面影は何もなかった。