「でも芹霞は…」


まだ黒い光を発して宙に浮いていて、触れようと思っても弾かれて。


「それは…須臾も同じだ」


そう言えば悲鳴が消えたなと櫂に促されるように須臾を見れば、今度は須臾が白い光を発して宙に浮いていて。


「須臾の身体に"邪悪の樹"の転写が終わった時、芹霞の対応する邪痕が反応した。そして今度は…芹霞の中にある"生命の樹"に、須臾の"聖痕"が反応した。つまりお互いがお互いを牽制し合い…排斥しようとしている」


白と黒。


まるで正反対の…須臾と芹霞。


「芹霞は…外部的干渉の心配はなくなったが…このままでは誰も触れることがなく、須臾か芹霞…どちらかが受け持つ力がなくならない限り、このままの状態が続くだろう」


少し固い顔をしている櫂に、俺はこくんと唾を飲みこんだ。



「なあ…久遠が転写出来るなら、俺達が魔方陣破壊をしなくてもよかったんじゃねえか?」


そんな質問をぶつければ、


「いや。転写に力を持たせるのは、影響する"土地"と"力"が切り離されねばならない。芹霞は元々転写の基礎がなされていた状態だったから、完全なものにする為は破壊が必要だった。そうだろう、久遠?」


久遠は答えねえ。


だけどさ、俺思ったんだ。


素人の芹霞が突然"転写"なんて出来るはずもねえ。


邪痕の顕現が転写の基礎だというのなら、もしかして…


「邪痕……お前が芹霞につけたのか!?」


思わず久遠の胸倉掴めば、久遠はふいと横を向いて…肯定した。


「じゃあ消せよ、出来るだろうがよ!!?」


黙秘かよ。


何で黙秘なんだよ!!?


「それが…贖罪を"断罪の執行人"を承諾した理由か」