不自然さはそれだけではなく。
正直――。
旭の話し方は違和感を覚える。
子供のようであり大人のようであり。
学があるようでなかったり。
客観的であり主観的であり。
まるで対になったものを併せ持っているような。
明確な輪郭を掴めない。
子供だからと譲歩すべきなのだろうか。
更に。
ちらちらと芹霞を見る眼差しは。
この上なく穏やかなもので。
言うなれば、安堵しきった追懐にも似た色。
何故?
女だから?
煌と桜を迎えに"無知の森(アグノイア)"に向かっている時、旭は言った。
「月。"無知の森(アグノイア)"で2人を連れてきて、あの石の処に。ぼくは他の皆を連れてこっち側から向かうから」
すると月は思い切り不満そうな声を上げた。
「ええ~。旭ずるい~。月だって、お姉ちゃん達と一緒がいい~」
「月、時が来たんだ」
その意味ありげな言葉に、月は黙り込み、尚も不服そうに口を尖らせた。
「月。赤いの貰ったんでしょ?」
すると月は、じとっと旭を見た。
「月に、赤いのくれたんだよね?」
「スケスケ……月貰ったね…」
旭の念押しに、俯く月。
その名称に、密かに過剰反応する芹霞。
何で芹霞があんな下着を……答えは容易に想像つく。
緋狭さんに違いない。
そしてその"スケスケ"のおかげで、芹霞と櫂の介抱が出来たのだと思えば、緋狭さんの機転に感謝せざるを得ない。
そう――緋狭さんのやることに無駄はないから。
必ず意味のあるものだから。

