「金翅鳥(ガルーダ)が認めたか」


「は!?」


「あいつはプライドが高いからな。認めた者にしか力を貸さん」


それは満足気に。



「抑えてみよ、それを」


指差したのは、未だ旋回し続ける炎の鳥。


戻れ、とか。

戻って下さい、とか、

お願いですからお戻り下さいマセ、とか。


思いつく限りの方法をイロイロ試してみたけれど、金翅鳥(ガルーダ)は俺を無視して気の儘にパタパタ飛び回ったまま。


何でだ?

俺が出したのに、何で言うこと聞かねえ?


土下座か?

土下座までしねえと、帰らないのか?


「……ふう。あいつはまだ完全には認めていぬらしいな。このまま野放ししていたら皆焼け死にだ。……どれ」


そして緋狭姉がぴゅうと短く口笛を吹くと、向けられたた緋狭姉の指先に従順に金翅鳥(ガルーダ)の足は止まり、拡げた炎の両翼を大人しくしまって、小さい炎となり…消えていく。


まるで幻術(イリュージョン)を見ているような鮮やかさ。


本家本元は凄えよ、本当。


「俺…金翅鳥(ガルーダ)操れたと思ったのに」


少し拗ねた口調で言ってみれば、


「私と同様に考えるな馬鹿者。金翅鳥(ガルーダ)が、お前の"思い"に呼応して少しだけ力を貸しただけだ。真実"操れる"ようになるまでには、鍛錬を逃げてばかりのお前には100年は早いわ」


がっくり。


少し持ち上げられていい気になった俺は、項垂れた。


同時に軽かった腕環まで重くなった。


だけどよ。


"鍛錬を逃げてばかりのお前には"


「……真面目にしてれば…操れるってこと?」


「期待に目をきらきらさせおって…。

可能性の問題だ。未来は未知数だからな」


それでも。

緋狭姉が否定しなかったことが俺は嬉しくて。


俺にもまだ強くなれる未来はある。


そう思ったら。


少しだけ、真面目に鍛錬をしてみようかなって気になった。


「……こんな脳天気野郎との一緒の鍛錬だけは真っ平ごめんだ」


ん? 何か桜の声が聞こえた気がしたけれど。


気のせいらしい。