気づけば俺は、機嫌を損ねたチビ陽斗に馬乗りにされていて。


俺の思考が過去にトリップしたその一瞬に、襲いかかられていたことを知る。


喉元にかかるチビ陽斗の両手。


絶対子供の力じゃねえ。


マジ、やべえかも。


そう思った時、玲の声がして。


榊と共に手助けしてくれるのかと思いきや、


――カラーン。


心臓を鷲掴みにする、地獄の音が鳴り響くと同時…


玲は俺をほっぽって…というか、全てを押し付けて…血相変えて走り出してしまって。


チビ陽斗は、榊が密偵だっていうことを、予め知っていたようで。


それはチビ陽斗が崇拝する"あの方"経由なんだろう。

教祖なんかじゃねえ。


多分だけど…こいつは、教祖が"人間"じゃねえこと知っている。


だとすれば崇拝するのは…


「"白皇"、か」


それしか思いつかねえ。


全ては白皇の計算の内だったのか。


月…旭が戻ってこねえ。


何とろとろしてんだよ、ドチビ!!!


あと1つ残っているのに…榊も何で動かない!!?


何で…2つしかねえ魔方陣を、壊すことが出来ねえんだ!!?


鐘は響いている。


「このままじゃ、櫂が!!! 榊、動け!!!」


しかし、苦渋の顔をした榊は、金縛りにあっているかのように動かない。