こつん、こつん…。
暗闇から見える足。
紫紺色の服の裾。
ロザリオ。
1つに束ねた長い髪。
こつん…。
「ごきげんよう、桜くん…」
アーモンド型の目をした男――
「お前、榊!!?」
玲様と煌がその名を呼んだその男に、
「桜!!! 殺気を収めろ!!!」
玲様の声に私は反射的に動きを止め、唇を噛み締めた。
「ふふふ。"男"に戻ることになさったんですか、桜くん。
それはそれは…」
「……桜、お前…玲と先に行け」
煌が戦意剥き出しにして、私と榊の間を割った。
かちゃり。
顕現された偃月刀に、決意と殺意を感じて。
煌も判っている。
この男の強さは尋常ではないことに。
「はははは。君が相手をしてくれるんですか? そうですかそうですか。
我が主が言う通り、実に君は面白い子だ」
それは一瞬で。
「ねえ、暁の狂犬くん?」
榊は、瞬間的に煌の耳元まで移動していて、愉快そうに…そう囁いた。

