あひるの仔に天使の羽根を


「な!!!」


無数の全裸の人間達。


人間…ではないのかも知れない。


背中から生えた白い羽。


有翼人種――或いは天使。


その肉体には手枷、首枷、足枷で自由が奪われ…チューブはその口の中に固定されていて。


「うわ……なんだ? 吸い取っているのか? 羽の奴らの養分を」


そうとしか思えない速度で、急速に老いて朽ち果てる。


その時、水槽の中の肉の塊がゆっくりと…泳いでいるように揺蕩(たゆた)って。

その口許から、小さな水泡がぷくぷくと。


それはどう見ても――


「生きてるのか、あの『胴体』!!?」


そして。


朽ちた身体を打ち捨て、別の者を宛がう人間は……


「あいつら……各務の給仕!?」


そしてその中で指揮をとっているのは、


「荏原!!?」


ざわめきはその指示に従う各務の者達で。


「これ以上の破壊による"漏れ"を防ぐため、出来るだけ早く!!!」


そんな荏原の声が響いていて。


抗う様子も見せぬ哀れな餌は、何一つ物音をたてない。


発声器官をやられているのか、声をあげる気力もないのか。


ただ淡々と…その交代劇は続いていて。


「飼育場だよ、此処」


舌打ちした玲様は立ち上がる。


「天使は"永遠"の犠牲となり…そして多分、ここ以外の部屋に…大勢が飼われているのだろう。あらゆる存在の、生命の糧として。言わば食料庫だ」


「食料庫…では此処は、旭の言う…」


「恐らく"深淵(ビュトス)"。実験室もあるんだろうな。そして煌が見た"生き神様"のフロアのもっと下に当たるんだろう」


「あ? でも俺達、そんなに下に降りてきたか?」


「走ってきた道は緩やかに下降していた。加えて地形変動でも起きているんだろう。大体は判った。次に行くぞ」


何が判ったのかは明らかにせず、再び魔方陣に連なる道程に出た時だった。


まるで待ち兼ねていたかのように――


こつん、こつん…


私達ではない…靴音がしたのは。


「!!!」


瞬時に私達は顔を見合わせる