俺が服を脱いで芹霞の傷口にあてていた時、異変に気づいた遠坂が、パソコンを持ってイクミと共に部屋にやってきた。


「どうした…おい、何裸なんだ、しど……な!!! 神崎!!?」


悲鳴じみた声を放つ遠坂。


「遠坂!! 紫堂の力で止血する!!! 発動できるよう、プログラムを大至急書き換えろ!!!」


ぶんぶんと頭を縦に振り、今まで以上に早い遠坂のキーボードを叩く音が聞こえる。


イクミが隣室のベッドのシーツを丸めて持ってきたから、物理的な止血を彼女に頼み、俺は手の甲で顔についた血糊を拭うと同時に、必死に精神を集中して力を発動させる。


結界と回復を同時に遂行出来、尚且つその威力を2ヶ月前に増大させた玲がいないのが悔やまれるが、今は俺が出来る1つの措置に講じる他術はなく。


回復を。


俺の全てを失っても、芹霞に生きる力を。


芹霞の身体から、真紅色が消えぬよう俺は必死だった。


芹霞は俺の強固な緑の球に包まれ――


その光を体内に吸収し、発光していった。


闇に比べれば弱さはあるが、応急処置には不足ないはずだ。


今まで芹霞を護り続けた俺の闇が、今の芹霞には凶器にしかならないのなら、俺はもう1つの力に頼るしかなくて。



やがて――



何とか血は止まり始め、全員で安堵の息をついた時。


遠坂の手にあるパソコンから、電子音が響いて。



「あ、師匠からメール。この地下の魔方陣は破壊したから、次はゲスト棟に行くって」



途端。


嫌な――

不吉な予感がした。



もしかして、俺は間違った指示をしていないか。


このまま…続行させていいものなのか。


俺のとった言動が、執拗な程何度も脳裏に再現されて。


妙に焦ったように、喉が渇く。