もし万が一。


魔方陣破壊が間に合わなかったら。


須臾の元に行こうとする俺を、きっと芹霞は止めるだろうから。


自惚れではない。


相手が俺でなくとも、芹霞はきっと身を張る。


そういう女だ。


自らが重荷になると判った時点で、どんな行動に出るのか、そんなもの…2ヶ月前によく思い知ったから。


嫌なんだよ、俺は。


「芹霞……」


お前を失ってまで、生きていたいと思わない。


お前の存在を消し去りたくないんだ。


お前のいない世界で生きるくらいなら、俺は――


「好きだ……」


覆うように両手をつき、芹霞の唇に口付ける。


何度も何度も。


身動ぎする芹霞の頬を手で抑えて、角度を変えた行為に耽る。


それでもまだ冷たい唇の感触に、これからのことが象徴された気がして。


少しでも俺の熱を伝えたくて。



「離れたくない……」



芹霞の身体を抱きしめた。


嫋(たお)やかな身体が、まだ温かいことに感謝する。



ようやく…お前に触れるようになったというのに。


どうして俺達はこうなるんだろう?


どうして上手く進んでいかないのだろう?