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部屋の荒廃ぶりは凄まじかった。


廊下で姿を見せなかったイクミが、せっせと片付けていたからまだ見れた装丁だが、強度を見せつけていた調度品の破壊ぶりは思った以上で、それが司狼という少年の力によるものだと思えば、より一層警戒が強まると共に、それを簡単に制していた緋狭さんの力を思い知らされる。


「桜と入れ違いに、突然現れたんだよ、あいつ!!! 気配殺していたとはいえ、堂々とドアからさ!!!」


僕が、ソファに芹霞を横たえた後、不機嫌そうな顔で煌がぼやいた。


「どうも…簡単にこの建物に出入りしてやがるよな、確かにここの持ち主は不在だったんだろうけどよ、神父の立場で各務の家うろつけるのか? "約束の地(カナン)"じゃ、各務と教祖が偉いんだろ? 教祖が居ないっていうのなら、各務が一番偉いのに…なんかあいつ、我がモノ顔だよな」


煌が首を捻った。


「確かに…ね。白服は教祖代行の地位があるにしても、教祖と各務の密接な関係を証明できない以上、それは奇妙なことだ。さっきまで芹霞がKANANという"蠱毒"ゲームの一環に巻き込まれたのも、拉致した司狼が原因だろうし。その彼は、誰かに命令されているようだけれど」


「……彼は紫堂や緋影、藤姫について知りすぎています。

玲様、彼は…白皇でしょうか」


桜が大きな目をくりくり動かし、噛みしめるようにゆっくりと言った。


髪を切った桜は、まだあどけなさはあるものの、どこから見ても男にしか見えない。


この短期間に、どんな心境変化があったのだろう。


桜は元から男だけれど、見かけの性別を逆転させたとしても、僕には変わらぬ忠誠心をくれるのは、凄く嬉しいと思う。


そう思った時、煌の嬉々とした声が響き渡った。


「桜も!!? 俺も実はそう思ったんだ、あいつが緋狭姉の言う処の"シロ"じゃねえかって」


途端、桜の顔が思い切り不愉快そうに歪んだ。


煌と意見が一致したことが、面白くないのだろう。


そして煌は、桜と意見が一致したことが嬉しいようだ。