「は?」


俺の驚きに、芹霞は苛立ったように目を細める。


「櫂にとってあたしは不必要な存在。

櫂にとってあたしは永遠じゃない。

櫂が永遠を捧げる相手は他にいるよ?」


突き放すようなその瞳。


だけど、真情を覗かせるその瞳。


「お前の中の俺って、そんな奴なのか?」


詰りたい。

怒りたい。


だけど俺は堪えて。


――それがお前の限界。


脳裏で久遠が嗤い続ける。


芹霞の思いを理解しないと、また俺は弾かれる。


今度こそ修復不能になってしまう危険がある。


「違うと思ってたけれど、だけど今回のことで思ったの。

あたしは櫂にとってマイナス要素はあるけれど、プラス要素は何もない。

あたしは――」


ぽろぽろと零れ始めた涙に、もう俺は堪えきれなくなって。


「我慢しろッッ!!!」


そう言いながら、芹霞の身体を腕に抱く。


熱いよな。


苦しいよな。


お前の声と動きでよく判る。


だけど、俺の苦しみも理解してくれ。


俺もお前への愛に焦げそうだ。


肌を通せば判るだろ?


「我慢して、俺に集中しろッッ!!」


俺はやっぱり我侭で貪欲な男なんだ。


言われてそうですかと引けないんだ。


そんな俺に相応しい女は、


「芹霞、もっと貪欲になってくれ」


俺に――。


「俺の環境ぶち壊してでも俺を求めろよ!!!」


芹霞が、俺から逃れようと暴れている。


「芹霞、俺だけを求めろよ!!」


俺の叫び声に――


芹霞は俺に縋って泣き出した。