「神崎。共にお爺ちゃんだけど、レグは外人だ。紫堂の目なら、地下牢の刹那が外人かどうか判別つくだろうさ。外人じゃないんだろう、紫堂」


「ああ。いかに白髪でやせこけていたとはいえ、体型からしてあれは日本人だ」


何で此の地には刹那が沢山いるのだろう。


思考が迷路になって、嫌になってくる。


その時、櫂が口を開いて。


「緋狭さんは、4人の刹那を合わせて考えるなと言ってたな」


――何が虚構か、何が擬態か、何が真実か。それらを見極めず、安易に全てを同じ名の元に合となせば、思考が破綻するぞ。


更にわけが判らなくなった。


各務家の子供は本当に3人なのか、それとも故意的に3人にされているのか。


その答えにより、須臾がシキミである可能性の割合が変化する。


でも誰に聞けば良い?


消去法でいけば、荏原さんしか残らない。


「なあ玲。"約束の地(カナン)"の全電気システムをお前が設計するとしたら、どれ程かかる?」


その時、唐突に櫂が話題を変えた。


「え? ここの全ての履歴を記憶して、あのセキュリティーで…そうだな、これだけボリュームがあるものだから、1ヶ月はかかると思うな」


「師匠……たった1ヶ月かよ…。普通早くて半年だってば」


由香ちゃんのぼやきは無視されて。


「"約束の地(カナン)"が出現したのは、4.5年前だと俺は記憶している。イクミ、お前はいつから此処に住み着いた?」


「私ですか? 生まれてからずっと此の地に棲んでいますが?」


「お前は幾つだ?」


「え、ええ? 14ですが」


「………。"約束の地(カナン)"で、電力が休止したことはなかったか?」


「さあ……? "中間領域(メリス)"に住んでいた時も、困ったことはありませんでしたね」


「お前はいつからレグの世話をしている?」


「そうですね…それこそ、4.5年前だと……」





「時間感覚が変だな」




そう玲くんが、鳶色の瞳を細めて呟いた。