「だけど、それがどうして"約束の地(カナン)"を作る理由になるんだ?」
煌の質問に、櫂が答える。
「ここからは俺の推測だが…その天使の仲間が生息する街を見つけたんだろう。元老院の魔の手から逃れて存続していたのは奇跡的だが、だからこそ元老院に取られぬよう…全ての天使の移動などという派手な行動は避け、その地に各務は家を移した。
実際戦後、各務家は鎌倉に遡る古い居宅を移動させた事実がある。
自らの敷地内に隠すことによって、それまで…小さいながらも機能していた街名は地図上から消え去ったことになる。
だが…不測の事態が生じた。その解決法として"約束の地(カナン)"を構想した」
「どんな事態? レグに見つかったこと?」
あたしが聞くと、
「いや…レグを追放した程だから、然程脅威ではなかったはずだ。
俺は…藤姫に悟られたのだと思っている。手帳により、各務翁は元老院を良くは思っていなかったらしいが、奇しくも…同じ穴の狢である藤姫と意気投合し、そのアドバイスにより人工都市が必要になったのだろう。紫堂とは別の…厳重管理出来る実験施設が」
あたしの脳裏には、陽斗が生まれ育ったという紫堂の研究施設が思い浮かんだ。
「じ、実験!!?」
「言葉を換えれば、"養殖"…飼育場だ。永遠をもたらす肉体を、思う存分増殖する為のね。それが理由の1つだと俺は思っている」
あたしは、顔を引き攣らせながら訊いた。
「ひっかかる言い方だね、櫂。他の理由もあるの?」
「多分。だけどそう言い切れるだけの材料は今此処にはない」
言う気もなさそうだ。
「だけどよ、櫂。実験施設だって言い切れる材料はあるのかよ?」
煌の声に反応した玲くんがパソコンを指差し、由香ちゃんが答えた。
「此の地で、電力分布を解析したんだよ。電力量が片寄っていたからね。そうしたら、"深淵(ビュトス)"の地下に、膨大量の電力が発生している。そして、そこから記録されたと思われる電子データを一部盗めば、なんと。人体実験と思われるデータが見つかった」

