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アノ味ガ忘レラレヌ

女ハ微笑ミナガラ
何処マデモ食ハセテクレド
食ヘル場所モ限リガアル

食ラヒ尽クシスギタカ

マダ食ヒ足ラヌ


我ノ頭ニハアノ異人ノ書

アレヲ実践スレバ
天使ハマタ蘇ルダロウカ

我ハ永遠ヲ手ニ出来ルカ
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「十分、理解出来るでしょう?」


そう笑った玲くんの前で、笑えないのはあたし。


「本当に…食べたんだ、各務翁……」


「そして虜になった。それだけその女の肉が美味かったのか、それともそれが愛しい女のものだったからなのかは判らないけれどね」

そう言ってから、玲くんはいやに熱の籠もった目をあたしに向けた。


「判らなくも……ないけれど」


途端。


あたしの背筋に得体の知れぬ寒気が走って、ぶるぶる震えた。


「よせ、玲。冗談もほどほどにしろ」


呆れるような口調の櫂に、玲くんはいじめっ子のような悪びた光を目に浮かべながら笑ったが、

"それだけ好きだよ?"


そう口が動いた気もしたけれど、見間違いかも知れない。


怪訝な顔を向けた時、玲くんは神妙な顔でまた櫂と話していたから。


本当に玲くん、何処から何処までが冗談なのか判らないよ。