人の姿を纏う異世界の住人、魔人。その中で女の姿をした者は魔女と呼ばれた。

 かつては人と魔人との間には争いもあったのだが、現在では魔人は人の世の隣人として親しまれている。

 若い魔女ガレアも、町外れの小屋にずっと住んでいる。

 青白く光る石を掲げて空を見上げていたガレアは、深刻な面持ちで呟いた。

「風が、ひどく騒いでいる…。影王は何をするつもりなんだろう…」

 魔女は、人界と魔界の橋渡しの役目も負っている。

 ガレアは特に魔族の因子が強いため、魔界から流れて来る波動を感じることができる。

 いつもはそよ風のように感じる波動の流れが、異様に激しくなってきている。

 ガレアはいやな予感がしてならなかった。