遡ること数十分前―――
「ラルフ様、どうぞ私の娘と一曲踊っていただけませんか?」
またか・・・
ラルフは、心の中で一人溜息をついていた。
ソフィアにシェイリーンを取られ、モルト王国の重役に挨拶に行けば、娘とダンスを踊って欲しいと言われる。
こちらは先程から、シェイリーンの隣に座っている男が気になってしょうがないと言うのに。
多分アレは、マリナという令嬢の友人なのだろうが・・・
チッ・・・
ポーカーフェイスなど忘れ、眉間に皺を寄せていると、目の前の初老の男がオロオロと自分の機嫌を窺ってくる。
しかし、今はシェイリーンの事が気になってしょうがない。
すぐにでも駆け寄りたいのは山々だが、目の前の汗をかきながら笑っているこの国の重役を放って行くわけにもいかず・・・
人が我慢していると言うのにコレではな・・・
毎回毎回、よく諦めもせずに申し出ることだ。
自分には、もうシェイリーンがいる事が分かっているだろうに。

