そう思うも、この場は父様以外には沈静化できなかった。
「ワイズ伯爵、今日のところは妃に免じて許してやろう」
よほど母様に信じてもらえていたことが嬉しかったのだろう。
いつもなら見逃さないその所業に寛大な処置をする父様。
ホッと胸を撫で下ろす伯爵を一瞥してくるりと振り返る。
そして、何事もなかったように母様を抱き寄せてこちらに戻ってくる。
「父様…母様…!」
「レナ、そこにいなさい。ガラスが散らばっているからね」
そう言って父様は母様の身体を軽々と抱き上げて僕たちの傍まで来た。
そっと僕たちの目の前に母様を降ろすと、レナが母様に抱き着く。
「母様!」
「レナ、心配かけてごめんね」
母様もレナを抱き返すと、やっと笑顔がこぼれる。
「頑張ったな、レナ」
父様がレナの頭にポンとおけば、レナの瞳にたまっていた涙が零れ落ちる。
「レオも、ありがとう」
レナと同じようにポンと大きな手が僕の頭を覆った。
頭を覆ってしまうかのような大きくて温かな手。
その時、分かったんだ。
母様は父様じゃないとダメだって。
父様がいなくても大丈夫だと思っていたけど、やっぱり母様には父様が、父様には母様なんだって。

