「言え」
笑顔が消えた父様にヒッと小さく声を上げて恐る恐る口を開く男。
「さ、最近ラルフ様の遠出が多いのは出向先にその…女がいるからだと」
男の言葉に母様がビクッと肩を震わせて俯く。
父様は何も言わずに男の言葉を待つ。
「ラルフ様の寵愛を一身に受けるお妃様も愛想を尽かされたのではないかと皆が申しているのです」
「何言ってるんだろうね、あの人」
噂とやらを聞いたレナが不思議そうな顔をしてそう言う。
まぁ、それも無理ない。
あの父様が母様に愛想を尽かすなんて考えられないから。
その逆はあり得ても。
父様も全てを聞き終えた後、深い溜息をつく。
「お前が言う皆とは、たった数人の浅はかな女の事を指しているのか?だとすれば、見当違いも甚だしい」
父様は苛立ちを抑えながら否定する。
「私がこれ以外の女に見向きもするはずがないだろう?」
聞く者によっては何の根拠もないその言葉に、うっ…と言葉に詰まる男。
僕たちには根拠なしでも通じるけどね…
僕たちより母様が大好きな人間が、他の女のところへ行くわけがないから。
そんな父様は母様を引き寄せ、男に向けていた凍てつくような表情を和らげて問う。
「シェイリーン、君はなんて答えたんだい?」
「あ…の……私は貴方の言葉を信じると」
母様は小さい声でそう答えた。

