偽りの結婚(番外編)




刹那――――――


「すまないが・・・」

背中から、心地良いテノールの声が耳に響く。

普段よりも、低く響くその声は、聞き飽きるくらい自分の耳に馴染んだ声で・・・

誰のものかなんて、見なくても分かった。



「シェイリーンには先約があってね。」

その人はそう言って、シェイリーンに伸ばされた男の手から、シェイリーンを離す。

大きな手が胸の下にあてられ、グッと背後に引かれた瞬間、背に感じる広い胸の中。

シェイリーンは、緊張で強張っていた体から、みるみるうちに力が抜けて行くのが分かる。

必死で我慢していた、涙が溢れそうになってしまう。



また、来てくれた。

本当はダメだと分かっているのに。

自分で何とか出来るようにならないといけないって・・・

貴方は私を甘やかしすぎよ・・・





ラルフ――――