偽りの結婚(番外編)




「本当においしいわ。このシフォンケーキ。」


後で料理長にレシピを教えてもらおう。

ラルフにも食べてもらいたいわ。

ふふっ…とラルフの反応を思い浮かべてほほ笑んでいると…




クンッ……―――――

ドレスの端が引っ張られる感覚に視線を向ければ、ディランが蒼い瞳で見上げている。



「ディランもほしいの?」


クーン…と鳴くディラン。

まるで「欲しい」と返事をしているようだった。

柔らかいシフォンケーキをスプーンで分け、大きい塊をディランへ差し出す。

すると、クンクンとにおいをかいだ後、パクッと一口で食べた。

小さく唸りながら食べる様子は、シフォンケーキが気に入ったからだろう。





「そう慌てないでもまだあるわよ。」


そう言ってスプーンを持った時、カランッとスプーンを落としてしまった。


落としちゃった……

そう思いながらも、スプーンを拾い上げるために椅子から立ち上がった時。






パシャ――――――


「え……?」


何かがはじけた感覚と同時に内腿を伝う何か。

これは……と思い当たるものがあったが、突如視界がグラリと揺らぐ。




こんな…時に………


ずるりと倒れる体。




そこで意識は途切れた――――――