偽りの結婚(番外編)




大きくなったお腹を気遣うようにそっと。

いつもみたいに息が詰まるくらい強く抱きしめられないことが少し寂しくも思うが、大人しくラルフの胸の中に納まった。

温かいシーツのにおいとラルフの香りに包まれて、ほっと息をつく。




「まだ心配ごとがあるの?」


ラルフの胸に頭を預けたまま聞けば…



「医者が、お腹が大きすぎやしないか…と。」


そう言われてみて、自分のお腹に視線を落とす。

言われてみれば確かに大きい。

出産経験がないので比べるものはないが、出産までまだあと2か月もあるのに、すでにお腹は限界まで張っていた。




「確かに大きいかもしれないけど、私たちの子供が大きくなっているって証拠でしょう?」


視線を上げてラルフを見れば、「そうだが…」と納得していない様子。




「王宮にいる限り大丈夫よ。たとえどんな事態が起こっても対処できるわ。」

「どんな事態も起こらないことを祈るばかりだよ。」


ラルフは私の髪に顔を埋め、深い溜息を吐く。




「心配しなくても大丈夫。さ、行きましょう?貴方がずっとシーツを持ってちゃ侍女たちが仕事ができないわ。」


そう言うと、ラルフはやっと笑みを浮かべた。



「そうだね。じゃぁ運動がてら行こうか。」


抱きしめられていた腕を解かれ、手を差し出される。

その手を「はい」と笑顔でとって、ラルフと仲睦まじく廊下を歩いて行った。