「じゃぁ…この香水の匂いは?」
「香水?あぁ…あの人の香水が移ったんだな。」
“あの人”と第三者の存在を認めるラルフ。
その上着を脱ぎ、香水の匂いを確かめる。
そして、本当だ…と言いそのまま上着をソファーにかけた。
一方の私はラルフの言葉に引っかかるものがあった。
「あの人って……?」
不安げな表情の私にラルフは安心させるように微笑む。
「信じてもらえないだろうが、王家の王冠とティアラを作っている職人が女性でね。彼女に手ほどきを受けて作っていたものだから彼女の香水の匂いがついてしまったようだ。」
「本当に…?」
「あぁ、誓って真実だ。」
ラルフは私の手を取り、自身の胸にあてる。
トクン…トクンとなる穏やかな心音。
さっきまであった不安が嘘のようにとけていき、手をあてていたラルフの胸に擦り寄る。
「良かった………」
体中から力が抜け、ラルフの胸に身体を預けた。
そして、ふわりと香って来たラルフの匂いに安堵する。
上着についていた香水の匂いはもうなかった。
「僕が浮気をしたと思ったのかい?」
ふとそう聞くラルフ。
その問いに、居た堪れなさを覚えながらもコクンと一つ頷いた。

