偽りの結婚(番外編)




もっと責めてくれればいいのに、シェイリーンはそんなことしない。



「けれど、君からスターンの家を奪ってしまった。」

「貴方は、お父様の遺品を守ってくれたわ。」


そればかりか、そうやって微笑んで許してくれる。

辛いはずなのに……



「それは、せめてもの罪滅ぼしだ。…君から家を奪った事には変わりない。」


シェイリーンの唯一の肉親だった父親との思い出の品。

それだけは、シェイリーンに残してやりたかった。

だが、こんなことで、許されるはずもない事は百も承知だ。

そして、シェイリーンが傷ついていないわけがない事も…



「辛かったら泣いていい。」


こんな台詞、自分が言う権利などない。

けれど……



「僕は君の夫であり、唯一の家族だ。君の悲しみは一緒に背負いたい。」


そう言うと、シェイリーンから無理した笑顔が消え…



「ラル…フ……」


掠れた声と共に、潤んだエメラルドグリーンの瞳からツーっと頬に涙がつたった。

眉根は寄せられているが、声もあげずに零れる涙。

それが見ていられなくて…



フワリ…―――――


その震える体を包んだ。