偽りの結婚(番外編)




ゴロゴロ――――

厚い雲の上で、唸る空。



シェイリーンは、雷が苦手だ。

きっと、この雨空の下、行けども行けども同じ風景の広がる迷路園で迷い、不安に苛まれているだろう…

そう考えただけで、いても立ってもいられなくなる。


雷が苦手だと知ったあの日。

カタカタと震え、小さな体を丸めるようにして怯える姿。

とめどなく溢れる涙に、尋常ではない雷への恐怖が垣間見えた。



あの夜は、珍しくシェイリーンの方から抱きついてきたりして…

それを思えば、あの男と一緒でなかったことに、喜ぶべきか…


しかし、足がすくむほどに怯えるシェイリーンを思えば、無事に連れ帰ってもらいたかったのも確か。

どちらにしても、苛立つのは変わりない。

結局、シェイリーンとあの男を一緒に行かせた自分が悪いのだ。







「迷路園へ入れてくれ。」

入り口で挑戦者のタイムを計っていた者に告げる。



「ラルフ様ッ…今からですか?」


「あぁ、そうだ。」



しかし……と、男が戸惑っていると―――



「どうしたんだ?」

様子を見て近づいてきたのは、この国の王子ウィリアムだった。