偽りの結婚(番外編)




「ッ…オイ!待て!」

不意を突かれたレナードは、一歩遅れて反応する。

ドレスの端を持ち、ありったけの力を振り絞って走った。



皮肉にも、ラルフやガーネットの言う“子供っぽいドレス”を着ていたお陰で走りやすかった。


そして、ここは巨大な迷路園。

くねくねと曲がった地形のこの迷路園では、追ってくる相手を撒くのに有利に働く。

後ろも振り返らず、暫く走っていると、後ろから足音と声が消えた。



はぁはぁ…と、乱れる呼吸を整えながら後ろを振り向けば―――



「良かった……。」

後ろから追って来ていたレナードの姿はなかった。



しかし――――

これで、完全に道が分からなくなった。

レナードだけが唯一の頼りだったのに。

その相手を振り切って来たのだから、分かるはずもない。



「どうしよう……。」

立ち止まって、ぐるりと周りを見渡す。

けれど、必死に走って来たからか、今自分が迷路園のどの辺りにいるのかが全く分からなかった。


さっきまでは、私でもどこの辺りにいるのかは分かっていたのに……