偽りの結婚(番外編)




やってしまった…



「やってくれましたねぇ、シェイリーン様。」


ビクッ―――――

ゆらりと体勢を整え、口元にニヤリと嫌な笑みを浮かべるレナード。

その視線と表情に、体が震えた。



怒っている…わよね……?

相手は、恐ろしくプライドの高い貴族。

第一印象のレナードは、そんなもの持っていないと思っていたけれど…

どうやら、それは間違っていたらしい。



カツッ―――――

「ッ………!」

口元に笑みを湛えたまま、一歩踏み出すレナード。

身の危険を感じて、一歩引けば、またレナードが一歩踏み出す。



「諦めて、私と楽しみましょう。」

あと一歩で触れる距離に来たところで、レナードの手が伸びる。

ゆっくりとスローモーションで伸びてくる手。



やっぱり、ラルフ以外の男の人なんて……



「ごめんなさい……ッ。」

頭を下げたところで、レナードの手は空を切る。



そして………

ダッ――――――

反対方向へ一気に駆け出す。