人前である事を気にしないというのもどうだろうか。
まぁ、この状況を真顔でやり過ごす宰相も、相当の強者だな…
無表情の宰相と、シェイリーンを抱き込み、話を聞くラルフ。
なんとも居た堪れない部屋の中、唯一部外者の俺は、黙って話を聞いていた。
「先程、ウォール侯爵家から晩餐会の招待状が届いたことをお知らせに参りました。」
「受けたのか?」
宰相の持ってきた話に、ピクリと反応し、そう返す。
この反応は………
長年ラルフに付き添ってきた側近の勘が、これは面倒なことになりそうだと予感した。
「ウォール侯爵家……。」
シェイリーンは、ラルフの腕から逃れようとするのを諦め、ポツリと呟く。
「はい。シェイリーン様は午後の予定がなくなったそうですし、ラルフ様も夜のご予定はございませんでしたので。」
やはり、宰相は最初から、シェイリーンの午後の予定が空いていた事を知っていたんだな。
シェイリーンも誤解がなかったことに、ほっと安堵している様子。
しかし――――
「受けたのならしょうがないな。」
我が主は、とても不機嫌なご様子。
「それでは、本日夜七時よりウォール侯爵家にて晩餐ですので、お忘れなく。」
そう言って、宰相は早々に執務室を後にした。

