今日は自分の誕生日。

その為に、シェイリーンが作ってくれたのだ。


しかし―――

「後で良いだろう?」

耳元でそう囁けば、ビクンッと跳ねる体。

耳に、額に、瞼に唇を落としながら、シェイリーンの気を逸らそうとするが…


「…っん……でも、せっかく作ったのに……。」

「ッ………。」

先程の口づけで上気した頬と、赤く色づいた唇。

少し潤んだエメラルドグリーンの瞳に見上げられれば、自分に拒否権はない。



「………わかったよ。」

口づけの後では、女の色香が増すシェイリーン。

そんなシェイリーンの“お願い”に逆らえるはずなく、しぶしぶシェイリーンの拘束を解いた。

どうやら、自分で墓穴を掘ってしまったらしい。



チーン―――

ちょうど焼き上がったのを知らせるオーブンの音。

どうやら、オーブンまで僕の敵らしい。


しかし、焼き上がったスポンジを見て嬉しそうな顔のシェイリーンを見てしまえば、そんな事はもうどうでも良くなった。