偽りの結婚(番外編)




「でもはなしだ。シェイリーン、顔を見せて?」

ちょうど横にある耳元でそっと囁けば、ピクリと反応を示す小さな体。

少しばかり躊躇った後、ゆっくりと首に回していた手を緩め始める。


そして、俯きながら距離を取った。

エメラルドグリーンの瞳は、しっとりと濡れた長い睫毛に隠れて見えない。



「何のケーキを作ってくれたんだい?」

俯くシェイリーンにそう言えば、「ブラウニーのチョコケーキ」とだけ呟く。



「甘いの…嫌いでしょう?…だから、ブラウニー……。」

「そうか……ありがとう。」

シェイリーンの言葉に、呆然と答える。

正直、そこまで考えてくれているとは思わなかった。

シェイリーンに甘いものが苦手だと言った覚えはない。

にもかかわらず、それを知っているというのは、普段から自分を知ろうとしてくれている証拠。

嬉しくないはずがなかった。


「ッ…………。」

しかし、目の前の愛しい人はどうとったのか、どんどん表情が暗くなる。