あと10分………
オーブンに表示された時間に、少し不安になる。
スポンジを焼くのは意外と時間がかかる。
ラルフ、お風呂から上がってこないわよね……
普段、ラルフのお風呂の時間は大体20分というところ。
時間を見計らってリビングに戻れば怪しまれない。
そして、ラルフがお風呂から上がってしばらくはこの食堂へ近づけさせなければ良いだけの話よ。
夕食後に、私が食器を片づけてからケーキを運べばいいんだわ!
オーブンの前に座り込み、ラルフがお風呂から出てきた時のシミレーションを頭の中でする。
っ………!こんなところでぼーっとしてちゃダメね。
ケーキに入れる果物を切っておかなきゃ…
そう思って、立ち上がった時だった―――
「シェイリーン。」
ドキッ―――
背後の扉から声を掛けられ、心臓が飛び跳ねた。
自分の名を呼ばれていると言うのに、振りかえれない。
誰のものかは分かりきっていた。
この離宮には私と彼の二人きりしかいないから―――

