偽りの結婚(番外編)




暖炉の赤々とした焔だけが、暗闇にぼぅっと色づいている。

暗闇に向かって、小さな声でポツリと呟く。



「ラルフ……?」

「ここだよ。」

不安げな声で呼べば、後ろから声を掛けられる。


すぐに返事が返ってきたことにほっと安堵しながら、声のする方へ向き直れば―――


「きゃ……ッ。」

ラルフと認識するより前に、突然の浮遊感に襲われ、体がふわりと浮く。

そして、横抱きにされた体は、ラルフの腕に抱えられ、広い胸の中におさまる。

軽々と抱き上げられたのはいつもの事…



「相変わらず軽いな。ちゃんと食べているのか?」

至近距離にあるラルフの顔にドキッとしながらも、口を開く。



「ついさっき、貴方の目の前で食べてたじゃない。」

クスクスと笑いながら答える。


私はこの旅行の為に何を頑張ったわけでもない。

いつも通りの決められた時間に食事をして。

いつも通りの時間帯に寝た。