そして、完全に歩みの止まった馬上で、温かな身体に抱きしめられる。
「ありがとう。」
ほっと安堵したように呟くのはいつもの事。
ラルフはいつも、私が傍にいる事を抱きしめる事で確かめる。
それが、とても心地良い。
ラルフの力強い腕に抱かれていると、これが夢ではなく現実だと思えるから。
この瞬間が、一番幸せ。
「どういたしまして。」
ふふっと微笑みながら言えば、ラルフは何だかばつの悪そうな子供の顔をする。
きっと、私が笑ったことが少し不満なのね。
こんなラルフを見ると、可愛いと思うのだが、ラルフの機嫌を損ねてしまうので黙っておく。
それに、言ったら最後、無事に夜が過ごせるとは思えない。
今日は、私の為にラルフが星空を見せたくて離宮へ連れて行ってくれるのだから、その目的は果たしたい。
しかし……
「離宮に着いたら覚悟しとくんだな。」
低温で耳から体中に浸透するその声で囁く夫は、すでに意地悪モードだった。

