「ラ、ラルフ、皆が見てるわ。」
シェイリーンは顔を赤くしながら、周りを気にしている。
見れば、驚きの表情で見つめてはヒソヒソと何かを話しながら通り過ぎる招待客たち。
周りを通り過ぎるほとんどの人が、モルト王国に招待された令嬢たちだった。
眉をひそめてコソコソとしているのは、シェイリーンの陰口でも叩いているのだろう。
『いやねぇ・・・あんなところで見せつけるように抱き合って。』
『それだけ、ラルフ王子を引き止めるのに必死なのよ。』
『なんでも伯爵家出身の娘らしいわよ?』
『体で引きとめるしかないのよ。身分の低い娘がしそうなことね。』
ヒソヒソといっても、わざと聞こえるように話す令嬢たち。
シェイリーンの耳にもきっと聞こえているだろう。
その証拠に、自分の胸に添えられたシェイリーンの手がキュッと服を掴んでいる。
何も、妃であるシェイリーンが俯く必要などないのに。
また、後ろめたいなどと思っているんだろうな。
もっと相応しい妃がいるんじゃないかなどと思っているのかもしれない。

