「世界選手権出場おめでとう」


肩を叩くと、タクは口元を綻ばせながら頷いた。


世界選手権の選考基準は、GPS上位三名、全日本選手権上位三名、世界ランキング上位三名に該当する選手から総合的に判断される。


総合的に判断とされてはいるが、どうやら例年通り全日本の結果重視という姿勢は崩れないようだ。


タクは西野と僅差の二位。三位の羽生とはかなりの点差がある。


普通に考えれば、上位の西野とタクが選ばれるはずだ。


だが五輪は違う。


四年に一度の祭典。国の威信をかけた、謂わばスポーツの代理戦争。


ましてフィギュア大国と化した日本の代表選手を決めるのだ。


全日本の順位だけで、結論を出すことは出来ないだろう。


過去から現在までの成績と成長、技術面から精神面まで総合的に判断するはずだ。


必ず勝てる選手を五輪に送るために。