リンクに潜む魔物は、思わぬところで牙を剥いた。
大塚さんはシーズン序盤から悪化していた怪我の影響からか、SP(ショートプログラム)で全てのジャンプが一回転になってしまい、過去最低の得点を叩きだしてまさかのショート落ち。フリーには進めなかった。
SP五位と順調なスタートを切った羽生さんは、FP(フリープログラム)の六分間練習の際、4Tを挑戦し転倒。
その際スケート靴のブレードが破損してしまった。
予備の靴は用意していたが、試合直前で靴を変えたのがいけなかった。
微妙な違和感。感覚の誤差。ブレードの破損による動揺。
もしかしたら大塚さんのこともあって、人一倍プレッシャーも感じていたと思う。
思うようにジャンプが決まらず、結果は十八位。
この時点で最大枠確保はなくなった。
日本から来てくれた応援団も完全にお通夜状態で、なんとも言い難い雰囲気が漂っていた。
それはSP六位で最終滑走となっていた俺にも無言で押し寄せてくる。


