目をキラキラと輝かせ、食い入るように演技を凝視している。
今声をかけても、きっと彼の耳には届かないだろう。
これからすぐリンクに立つ人間が、緊張感を上回り大介のステップに魅了されている。
朝飛の憧れの選手が大介ということを含めても、さっきまでこの世の終わりのような表情をしていた選手をここまで明るくさせるとは……。
俺の励ましの言葉はなんだったんだろう。いらなかったじゃん。
残る要素は二つのスピン。
キャメルスピンからキャノンボールスピンへ移行。上体を起こしながら両手で両足首を掴み、前屈姿勢のA字スピン。軸足を換えて再びシット。そしてアップライトスピン。と、次々とポジションを換えて行く。
流石に疲労が見えてきた。スピンの回転速度が最初と比べて明らかに遅い。
最後のスピンはバックエントランスからのパンケーキスピン。軸足を換えて深いシットポジションを維持して回る。
音楽が静かに終わりを告げ、直後に割れんばかりの歓声が会場を震わせた。
これが王者の演技の言わんばかりの圧倒感。小さいガッツポーズを作って、早々とリンクサイドに戻って行く。


