「でも、やっぱ好きなんだよな。理屈なんかなくて感覚的にさ。だから辛い練習や苛酷な試合にも耐えられるし、頑張ろうとも思える。だから良い演技が出来た時は、すっごく嬉しいんだよな」
朝飛が頷く。
視線はリンクに向けたままだったが、その横顔は先ほどとは違って血の気が巡って明るく見えた。
「楽しもうぜ。なによりも自分のために」
「楽しむ?」
「嗚呼、お前はジャンプが跳びたくてフィギュアを始めたんだろ? だったら跳びたいジャンプを跳べばいい。成功すれば大喝采、失敗してもよくチャレンジしたと認めてくれる。
それがジュニアの特権だ。だから思う存分楽しめばいいんだよ。どうせ滑るんなら、楽しんだ方が得だろ?」
「タク兄も楽しんでる?」
やっとこちらを向いた。
真っ直ぐ見詰めてくる瞳には、疑問の色が見え隠れしている。
「俺は優勝でもしない限り、五輪は出場できない。でもタク兄は違う。優勝も狙えるし、三位以内に入れば五輪に出場できるチャンスもある。それでも、この状況を楽しむ余裕があるの?」


