コーチの同意を得た。朝飛の同意は得てないけど、ここで沈んでたって仕方ない。
朝飛の手を無理やり引いて立ちあがらせると、そのままある場所へ誘導した。
厚いカーテンを越えると、そこは会場。満席の観客と白いリンクが眼前に拡がっている。
「タク兄、まだ試合中……」
リンクでは第二滑走者が演技をしている。
邪魔をしては悪いので、リンクサイドの隅へ移動。
朝飛は不安そうにキョロキョロと辺りを見回すが、大丈夫だと言い聞かせて視線をリンクへやった。
「懐かしいよな。昔はよくこうやって、前の演技者の滑りを見てたっけ」
ノービスの頃を思い出す。
演技前に集中なんて出来なくて、前の選手の演技が気になって仕方なくて、コーチの目を盗んで朝飛と共にカーテン越しに覗いていた。
「出来が良いと落ち込んで、出来が悪くても『次は自分がこうなるんじゃ』と落ち込んで、結局落ち込むことになるのは分ってるのに、どうしても気になって……。あれは負のスパイラルだったよなぁ、ほんと」


