氷の女王に誓約を


膝の状態と年齢的なことも考えて、大塚さんは引退しプロに転向したのだが、いかんせん引退の時期が悪かった。


今年は四年に一度の五輪シーズン。日本のエースで第一線を戦っていた大塚さんの抜ける穴は大きい。


膝も今すぐ手術が必要というわけではないようで、もう一年だけ現役を続けてくれという依頼を受けているようなのだ。


現役復帰を強く望んでいる人達にとったら、アシスタントコーチ就任は面白くない出来事だろう。


「ひっでぇな。酷使させてまで試合に出させるとか、選手を守るのが連盟の仕事だろ」


「前の五輪が散々な結果だったから、少しでもメダルの可能性がある選手を送りたいんだよ。男子フィギュアのメダルはまだないしね」


「あー……確かにメダル一個じゃ格好つかないわな。躍起になるのも仕方ねぇか」


「その躍起が俺に向かなければいんだけど……」


考えただけでどっと疲れが襲いかかる。


大塚至上主義の人達からしたら、俺は憎っくきクソガキだ。


色々と“相談”を持ちかけられるんだろうなと思うと、自然と溜息が出てしまう。