綺麗な子だな。

落ち着いているし、

大学生と言われても納得できる。

ただ......どこか寂しそうな雰囲気。

何か悩みでもあるのか。

「お前...」

「え?」

「何か...悩んでる?」

初対面でいきなり何だという感じだろうな。

口に出した後少し後悔する。

「そう...見えますか?」

「あぁ。悪い、余計なお世話だな。」

俺が苦笑うと、生徒も寂しそうな瞳のまま

小さく笑った。

「そんなことないです。先生こそ...」

「...え?」

「疲れてません?大丈夫ですか?」

図星。

あまり気持ちを表に出さないタイプなので、

余計に驚いた。

「先生ってのは疲れるんだよ。」

冗談めいて言うと、生徒はまた小さく笑った。

「また...何かあったら手伝ってくれるか」

何故こんな言葉が出たのか。

言った後自分で驚いた。

「いいですよ。」

生徒は微笑んだ。

「俺は......桐谷圭吾。」

「この間紹介されてたじゃないですか。
 知ってますよ」

生徒は笑う。

調子狂う。

「お前は?」

「私は......」

微笑んだまま、

寂しい目をしたまま、

生徒は綺麗な声で言った。

「篠宮...葵です」