春樹と美奈はひろげたそれを覗き込むと、

今度は美奈がキレ始めた。

「何だよこれ!?誰が貼ったんだよ!」

誰も答えない。

「...貼った奴、出て来いよ。」

春樹が静かに言う。

沈黙が流れる教室に、

春樹の落ち着いた声が響き渡った。



「...私がやりました」

消え入りそうな声で、そう言ったのは、

やはり花音だった。

「てめぇかよ!
 何でこんなことしたんだよ!」

将太が噛み付くように怒鳴る。

花音は泣きながら、

「先生が好きだからです...」

と言った。

「ホントに付き合ってんのか?」

誰かが呟いた声に、

「付き合ってる訳ねぇだろうが!
 勝手なこと抜かすとマジ殴るぞ!」

竜也が怒鳴った。

その直後、小さな悲鳴が聞こえた。

美奈が花音に掴みかかっていた。

「てめぇ、あたしの友達に
 何してくれてんだよ!」

美奈は怒鳴ると、

花音の頬を思いっきり叩いた。

パン!と大きな音がして、花音が倒れた。

「美奈、下がれ」

春樹は花音のところへ行き、しゃがみ込んだ。

「色々そっちにも事情はあるんだろうけど、
 次また葵を傷付けるようなことしたら、
 許さねぇからな。」

普段は静かな春樹の、低く通る声に、

教室全体が凍りついた。