コンコン。
ドアをノックする音に
自然と背筋が伸びた。
「どうぞ」
俺がそう言うと、
うつむいた葵が
トボトボと入ってきた。
俺は向かい合わせに置いた椅子に座らせ、
ドアの鍵を閉めた。
何もするつもりは無かったけど、
なんとなく、
閉めたかった。
葵がすぐ逃げてしまうかもと
思ったからかもしれない。
「...何ですか」
感情のこもってない、葵の声。
「...何ですか、じゃない。
お前、最近授業出てないだろ。」
「具合悪いんで。
その分試験でとりますから。」
......違うだろ。
俺が言いたいのは、成績がどうとか、
そういうことじゃない。
いつも親に縛られているお前に、
これ以上成績のことを言うつもりはない。
分かっているくせに、
しらばっくれる葵。
葵を
こんなにも寂しがりやの葵を
不安にさせてしまった。
そんな自分が
歯痒かった。

