「何が大丈夫なの??
先生が準備室に来るなって言ったの、
花音と会うためとかじゃないの??」
......は?
葵は何を言ってるんだ?
「そんな訳ないだろ。
俺が付き合ってるのは葵だろ?」
「もう...飽きちゃったとか...」
今すぐ会って抱き締めたい。
そうして、不安を溶かしてやりたい。
でも...仕事が山積みだ。
バレる可能性もあるので、
頻繁には会いにはいけない。
「葵?ちゃんと聞いて?」
「うん...」
「俺は、葵が好きなんだ。
他の女の子に差し入れ貰おうが何されようが
絶対にそれは変わらないよ?
俺を信じて?」
「でも...花音可愛いし...」
「俺には葵しか見えないんだ。
分かるだろ?」
「でも...先生と付き合ってるのは私なのに、
花音は学校で会えて私は駄目なんて、
嫌だよ......」
分かってる。
俺だって嫌だよ。
「でも...バレるとこの関係を
続けられなくなるかもしれないんだよ?
俺はこれからも葵と付き合ってたいんだ。」
受話器の向こうで葵が泣いているのが分かる。
声を押し殺して、
俺に気付かれないように。
泣くな。
泣くなよ葵。
俺が再び口を開こうとしたその時。
「もう...もういい...」
消え入りそうな葵の声の後、
電話が、
切れた。

