その夜、春樹から電話があった。

「ごめん、いきなり電話して」

春樹の穏やかな声。

「ううん。どうしたの?」

とぼけてはいるが、

先生のことかもしれない。

「葵ってさ...先生のこと、好きなの?」

やっぱり。

春樹には敵わない。

「......」

答えられずにいると、

春樹は思い出したように、

「あ、大丈夫だよ。
 俺誰かに言ったりしないから」

確かに、春樹はそんなこと絶対しない。

春樹ほど信用できる男子はいない。

「分かってるよ。
 ホントのとこ言うとね......」

「うん。」

「分かんないんだ。」

「分からない?」

「うん...これが好きって気持ちか...」

「中学生みたいなこと言うなぁ。
 久々にそんな台詞聞いたよ」

柔らかい声で笑う春樹。

「ホントだよね」

つられて笑う。

「でも...」

「でも?」

「一緒にいたい。そう思うんだ」

正直な気持ち。

だけど、口に出しただけで

顔が熱くなるのが分かった。

「そうか。まぁ...
 何かあったら相談しろよ?
 何もできないけど、
 俺は葵の味方だからな。」

なんて、ちょっと青春ドラマみたいかな。

そう言って笑う春樹。

春樹はいつも、安心感をくれる。

「ありがとう。」

ありったけの気持ちを込めて。

少しだけ、モヤモヤが晴れた...

気がした。