扉のベルの音が、静まりかえった店内に響いた。



扉の閉まる反動で薄茶色の髪がフワリと揺れる。



細く華奢な少年が、肩をおとし黙りこんだ三人の席に、ゆっくりと歩み寄った。





「どうかした? 時化た顔して」



――えっ!? 周桜くん!?



郁子は、ハッとし顔をあげ詩月を見上げた。




「目が赤いよ」


郁子は、詩月に言われ慌てて涙に濡れた頬を拭った。



「詩月! お前、病院抜け出して?」



理久が厳しい顔で訊ねた。



「今朝、退院した。

外出の許可はもらってるよ」




詩月の拍子抜けするほど明るく優しい笑顔に戸惑う。