「おぉー、お客さん、結構入ってるね」


ステージ袖からチラリと客席を見た慎一が言った。


このオーディションは全ての大会に客を無料で入れているのだ。


だいたい地区大会で二百人、関東大会で千人、全国大会で二千人くらいだ。


「よし、気合入れていこーぜ!」


竜太の呼び掛けに三人は「おう」と答えた。


そのとき、MCの女性がステージに上がった。


そしてマイクを唇にかざすと、観客に言った。


「お待たせ致しました。次は昨年度関東大会まで勝ち進んだバンド、『WORLD LINE』です!」


四人はステージへと上がり、それぞれのパートにつく。


この大会で演奏できる曲は一曲のみ。失敗は許されない。


聡はメンバーのセッティングが完了したことを確認すると、ゆっくりとスティックを掲げた。


「ワン、ツー、スリー、フォー!」


聡のスティックカウントで、曲が始まった。


勢いよく動き回る竜太。


ギターを股に挟み、ピッキングと同時に激しく首を振る和樹。


お腹をブヨブヨと揺らしながらジャンプする慎一。


そして、スティックを振り回す聡。


観客は聡たちのライブパフォーマンスの凄さ、演奏力の凄さに唖然と口を開ける。


そして、あっという間に曲が終わった。


「ありがとう!」


竜太のその声で、観客は大きな歓声を上げた。


四人はそれぞれ楽器を置くと、ステージの下に降りた。


ステージの下では、さっきのスーツの女性が待っていた。