君の温もり


「いや、当分止まねぇだろ」

「ですよね…」


こんなにザーザー降ってんのに今すぐに止む訳がない。

空を見上げながら思わず肩をガクっと落とした瞬間、あたしの視界に入ってきたのは透明のビニール傘だった。


「…え?」


突然現れたその傘に戸惑いの声を出す。

視線を傘から隣に向けると、

「何処まで帰んの?」

そう聞いてくる先輩に思わず茫然と見つめてしまった。


数分…いや、暫く言葉が出せなかった。

無いと言っていた傘があたしの頭上で開かれている。先輩とあたしを取り囲むように傘が開いてる。


「あ、えっと…何で傘があるんですか?」


思った通りの言葉を先輩に投げ掛ける。そんなあたしに先輩は見下ろし見向きもしないまま背後を指差す。


「そっから借りた」

「…借りた?」

「あぁ」


首を少し傾けながら指差された方向を見ると傘置き場が目についた。こんなに雨が降っているのにも係わらず、まだ数十本と傘が立っている。

そっか借りたんだ。と思うはずもなく、あたしは驚きの声を上げていた。