Kiss★恐怖症

"可愛い"だって!


その言葉が頭の中で何度も何度もリピートされる。


余計に恥ずかしくなるわけだが。


でも恥ずかしさより嬉しさが勝つ。


お洒落してよかった。


浴衣を着てきてよかった、そう思う。


相変わらず、直樹は照れたままで目を合わせてくれない。


それなら―…。


私は勢いよく立ち上がった。


「なーおーき!」


「うわっ」


合わせてくれないのなら自分から合わせにいってやる。


顔を近づけるが、また逸らされる。


その繰り返しが何度も続く。


なんだかちょっと直樹に勝った気分。


そのうち。


「わかったわかった!逸らさねーから!」


「わかったならよろしい」


私はえっへんと腕を組んでみせた。


少しは今ので慣れてくれたみたい。


「花火まで時間あるしお祭り楽しも?」


「そうだな」


直樹も立ち上がったと同時に、また自然と手は繋がり。


私たちは屋台へと歩きだした。


「私、綿菓子食べたい」


「女子ってよくあんな甘いもん食べれるよな。あれ砂糖の塊だぜ?」


「えー!!綿菓子食べないとか人生損してる」


「なんでだよ!俺は、焼きそばだな」


なんて話をしながら、屋台の通りを歩いた。


金魚すくいをしたり、射的をしたり。


綿菓子を無理矢理直樹に食べさせたり。


焼きそばを分けてもらったり。


本当の彼氏彼女のように、終始2人の笑顔が絶えることはなかった。